導入事例

「予実管理」の考え方で推進。有事に素早い対応が求められるインフラ企業がHRデータ活用を始めた理由
101~1,000人 インフラ系 活躍人材の予測 配置の定量化
  • 会社名:三ッ輪ホールディングス株式会社
  • 従業員数:101~1,000人
  • 業種:インフラ系
  • 導入目的:活躍人材の予測、配置の定量化

導入のポイント

  • 組織が変わってもコストをかけずカスタマイズが可能
  • 退職防止や若手育成、ジョブローテーションに相性データの活用へ

「新しい価値を創造しつづけること」をミッションに掲げ、エネルギー事業を主軸に展開する三ッ輪ホールディングス株式会社(以下、三ッ輪ホールディングス)。1940年に煉炭製造・石油販売で創業し、現在はLPガス事業を中心に展開する三ッ輪産業株式会社をはじめ、エネルギー供給とともに「エネルギーの使い方」を提供する企業群のホールディングスカンパニーとして2019年に設立されました。現在は主に7社の事業会社を抱え、グループ全体で約600人の社員がさらなる価値創造に挑戦しています。

今回は人材開発グループのグループマネージャー塩崎智さんに、三ッ輪ホールディングスがデータ活用を始めた背景やこれまでの取り組み、今後の展望について伺いました。

社員のメンタルヘルス調査で「データ」と「感覚」のギャップを痛感

三ッ輪ホールディングス株式会社様のデータ活用の状況について、教えていただけますか。

私が三ッ輪ホールディングスに入社したのは2018年頃になるのですが、その時点ではHR系のデータについては基本的にほぼ表計算ソフトで管理していましたので、データを使って何か行うことは一切ありませんでした。社内のやりとりも、基本は対面重視です。あとはメールや電話で、当時はそれが主流でした。

それから1年ほど経ち、2019年10月に台風19号が千葉に上陸しました。電車が止まるような状況になって、「今日はうちの会社はやっているのか」「時間通りに出社できない」「今日はどうするんだ」と、色々な連絡が組織的に飛び交わなかったんですね。BCPの側面から、しっかりと連絡が行き届く素地を作らなくてはいけない、という話になりました。そうした経緯で、連絡手段としてビジネスチャットツールの導入をしたのが最初です。

私たちはインフラの会社ですから、台風など有事の際にガスや電気が止まって皆さんが困っている状況にこそ、素早く適切な対応が求められます。社長も危機管理対策に関しては課題意識を強く持っており、部署横断でのスムーズな情報共有のためのチャットツール導入がこのタイミングで一気に進みました。社内情報共有のインフラを整えることができた直後、新型コロナウイルスの流行という次の転機がやってきました。

三ッ輪ホールディングスも、他社と同様、今までは対面で行っていた会議をオンライン中心にに切り替えました。週に1回の営業会議に出席するメンバーは、関東近郊の山梨や小田原から2〜3時間かけて新宿まで車で来て、会議に出て帰るというのが基本でしたが、コロナ対策で直接会うことが難しくなりました。オンラインで会議を行うようになってからは「この移動時間をもっと他のことに活かせるのでは?」というムードが漂いはじめた反面、ずっと対面で行っていた仕事が急にリモート的な働き方に変わったことで、皆さんストレスが溜まっていそうだな、という雰囲気を感じていました。しかし、事実なのかどうかはわからない状況でした。「実際の状態をサーベイで確認する必要がある」と考え、チャットツールを使って健康状態を把握できるサービスを2つ導入することにしました。

2020年4月に初めて緊急事態宣言が出されて、翌月のゴールデンウィークには導入を終えて調査を行ったところ、「約6割の社員のがストレスフルである」という結果が出ました。相当悪い状況であると感じ、医師に相談できるサービスを社内に一気に導入しました。

社内で顔を合わせていれば、社員のストレス状態を一定程度把握できていると思っていたのですが、それぞれの抱えているストレスが増大しても、リモートワークによって可視化されにくくなっていることを認識しました。そのときの経験から、こうして定期的にデータを取って事実を確認してみることは大事なんだと気付いたんです。定点で観測していくと、コロナ禍の仕事環境にも慣れてきてだんだんと落ち着いてきていることが分かったので、そういう変化が見えることにも意味があると感じました。

それ以降は、メンタルヘルスではない領域もデータを取り始めてみようと考えました。、データドリブンに人事課題を解決するにはどういうデータが取れていればいいのかと、データ収集・分析の取り組みを始めて、現在に至ります。

感染症拡大による仕事環境の変化がデータ活用の社内理解が進む要因に

さらにデータの取得を進めていったとのことですが、具体的にはどのような取り組みを行ってきたのでしょうか?

まずは、導入した2つのサービスを実際に使ってみて、どちらを使い続けるか決めることにしました。

当時使っていた2つのサービスのうち、ひとつは「健康状態に特化してアンケートを取る」というものでした。こちらは使用していくうちに数値に改善が見られたこともあり、定点での観測は不要と判断しました。もうひとつは、「ビジネスチャットツールで誰と誰がどのくらいやり取りしているか可視化できる」サービスです。社員の顔写真がソシオグラムのように表示されて、つながりを示す線の太さでやり取りの頻度がわかります。心理的安全性や信頼度などが出てくるアンケート機能も備わっていたため、それを使ってデータを取り始めました。

半年ほどトラッキングした結果、心理的安全性や信頼度も高めの傾向にあることがわかり、他社と比べても良い状態とのことでした。ただ、もう少し個別に見ていくと、部署や営業所によって差があるため、そこをどう改善していくかはこれからの課題です。現在、サービス提供会社様がシステム改修中なので、改修後に再び改善していこうと考えています。

先進的なツールを積極活用していますね。そうしたツールが社内でポジティブに受け入れられた要因は何だったのでしょうか?

最初は「意味あるの?」という反応も見られましたが、コロナ禍での状況が後押しになりました。それまでは対面で会うことが基本でしたが、それができなくなって「みんな大丈夫かなぁ、顔も見られないし」と考えるようになり、データで見てみよう、という流れでしたね。結果的には、いつものやり方を絶たれたことが大きかったかなと思います。

もちろん、データだけで全面的に判断しているわけではありません。「オフラインでのやりとりもあるのだから、チャット上のコミュニケーションだけが全部だと思われたら困る」という意見もあります。そこは理解しつつも、一定程度の参考値にはなるよね、というところまでは社内の理解が進んできています。

社長自身もコンサル出身で、データに対しての知見が深い方です。かねてから「過去の経歴や、肌感覚だけでは判断できない」という意識はありました。良いと思って採用した人が2〜3年で辞めてしまう、というケースが散見されたこともありました。きちんと見られていないのでは、という課題意識もある中で、「何が正しいのかは客観的事実、どういう物差しで見るかによるよね」と。社長はそういうディスカッションが好きで、追求してくれる方ですね。

採用領域でデータを活用し、自社に定着し活躍できる人の適性を可視化

HR領域ではどのような課題を感じていたのでしょうか?

採用の領域で、以前は大勢の受験者(母集団)から優秀な人材を見つけ出すことができる適性検査を使っていたのですが、三ッ輪ホールディングスは母集団がそこまで多くないため、採用戦略とマッチしていませんでした。また、優秀な人材の適性は部署ごとにも異なります。営業や小売、卸、営業事務と色々な部署があるなかで、以前使っていた適性検査ではそれぞれに適した採用基準を作ることもできていませんでした。それを解決できるツールを探して、別のサービスを導入することにしました。

次に使い始めたサービスでは、「入社後10年間で、役職者になれる具体的な人材のイメージは?」という聞き方でモデルを作ってもらいました。役職者まで昇進するような人・昇進した人をハイパフォーマー(活躍人材)として定義して採用モデルを作ってもらったのですが、弊社として採用したい人材像と合っていそうだなという印象がありました。導き出したモデルと、応募者との共通性が数字でわかるサービスだったため、「営業の小売だと86%、卸だと62%、事務系だと55%、理想のモデルと類似しています」といった確認が可能でした。これが全てではないのですが、採用時に「この人を採用するとしたら、一番適性があるのは小売の営業ですね」というふうに参考として見ていました。

別のサービスに変えたことで、その採用基準で採用した人たちは一定程度、定着し始めました。効果があった反面、「組織が変わるたびに、モデルを作り変える必要がある」という課題もでてきました。品質は高いと思っていたのですが、組織変更のたびに頻繁にモデルを変えることになると費用が高くなってしまいます。

そこで見つけたのがアッテルです。入り込みは少し緩くなりますが、組織変更しても自分で編集できるところに興味を持ちました。アッテルの場合は、今いる人材の中でモデルを作るため、その点で前回利用していたサービスと若干の乖離はあるのですが、組織が変わっても、容易にもう1回モデルを作り変えることができる点が大きなメリットであると感じ、導入に至っています。

アッテルを使っていただいて、良かったところを教えてください。

まずは、カスタマイズが容易であることが一番良いところだと思います。モデルを作るところも、単に今いる人の分析だけではなくて、その部分もパラメータを自分で設定することができ、仮説検証ができるようになっているところは良い点だと感じます。また、プライシングについても応募者については無料で、社員の人数のみが課金対象というのも良いところだと考えています。

もう一つは、これから我々も取り組むところなのですが、「この人は良さそうだ」と思って採用しても、実態とのギャップがあった際にPDCAを回せるところです。だれが面接を担当していて、どのように採用に至ったかを記録することができます。そのデータは後々活きてくるだろうと思いますね。「このパターンは気をつけなくてはいけない」「この人は好きそうなパターンだけれども、実際入るとギャップがあってすぐに辞めてしまう」など、そういったデータが溜まっていくと思います。採用する側の目線合わせの意味でも、調整できるところは良いなと感じています。

新人が早くに辞めてしまったことがあったのですが、アッテルの結果と照合して検証してみたところ早期離職の傾向があり、「ここに書いてあることは一定程度は信用できる情報だ」と実感しました。今は実際のデータと結果をもって、PDCAを回している状況です。

データドリブンの基本は「予実管理」で、“実”をいかに残すかが重要

データドリブンな考え方に至っていない会社さんも、まだまだ多いと感じています。そうした発想に至るためには、何が重要でしょうか?

私自身は、前職やそれ以前の会社でこうしたデータを扱った仕事をしてきたわけではありません。アセスメントが大事だということはわかっていたのですが、現職に就いてから調べて「どうやったら導入できるか」を考えていきました。先ほどお話しした「社員の6割以上がストレスフルだった」という話も象徴的ですね。

もともと私は「パルスサーベイは意味がない。直接上司に言えばいい」と思っていました。それがある日、若手から「上司は忙しそうだし、伝えたことがどう扱われるかもわからないので、自分の状態を伝えるのは抵抗がある。全員に発言する機会が与えられている方が話しやすい」と言われことがありました。この話を聞いたときに、パルスサーベイで社員の声を聞く機会を作ることには意味があるなと感じました。自分の感じた見た目と取得したデータが示す結果が違うことはよくあることですから、その乖離を見逃すと、退職にも繋がりかねません。その若手の話をきっかけに自分の感覚だけでなく、きちんと情報収集する手段を持っておくことは大事だなと強く思うようになりました。

三ッ輪ホールディングスでは「若手の戦力化」が重要で、彼らのメンタリティがどうなっているかを注視しています。先ほどもお話しした「入社してすぐに辞めてしまった新入社員」ですが、顔を合わせているときは割と元気に振る舞っていました。ところが、よく聞いてみると「仕事がつらい。割り当てられた業務が苦手で、勉強することも本当につらい」と言っていました。それを気づけなかったが故に辞めてしまったんですね。自分の感覚以外の物差しがないと、すぐに変化に気づいて寄り添うことは難しいです。そういう意味でも、客観的な基準があることは大事だと私は強く思っています。

そうした事例も含めて、データドリブンの基本は記録に残していく「予実管理」だと思っています。特に“実”をいかに残すかが重要で、「予実の差をどう埋めていくか?」が大事だと考えています。まずはやってみて、それがどうなのかをしっかりと検証していくことだと思いますね。

そのような気づきを得られる経験を、皆さまにどのようにしていただくかがポイントですね。

そうですね。やはり自分の経験のほうが正しいと思いがちです。ただ、それでうまくいかない、うまくいくと思い込んでいるのは、失敗の経験を記憶から消去しているからだと思っています。

実をしっかりと取って「この人は私が良いと言って採用したが、結局ダメだった」など、そういうことを記録として残しておく必要があるのではないでしょうか。成功事例だけでなく、失敗についてもデータを蓄積していかないと精度はなかなか上がっていきません。アッテルはそういうコンセプトで作られていますよね。その意味でも、“実”を取っていくことが非常に大事だなと思っています。

退職防止や若手育成に相性データを活用し、PDCAを回す

今後はどのようなことに挑戦したいと考えていますか?

若手に限った話ですと、いま重要視しているのは「長く働き続けたいと思える環境づくり」です。これまでは退職率を下げることに集中していたため、比較的穏やかに仕事をしてもらっていましたが、ある程度の規模の若手が揃いつつありますので、そろそろシフトチェンジの時が近づいてきていると考えています。これからは徐々に、早期戦力化に重きを置き、結果を出せるように道筋を設計していく必要があり、そのためには、私を含めた人事部のような斜めの立場からのプレッシャーではうまくいきません。上司部下の縦の関係の中で成長できる環境を作る、というステージへの移行が必要です。

ただ、上司部下の関係にも当たり外れがあります。まさに「相性」です。優秀さとはまた別の「相性」という観点をしっかり見極めることですね。その点で失敗してしまうと、若手の早期退職に繋がってしまいます。特に現場では「上司の背中を見て、育て」という文化が強い傾向にあります。現場でもデータを活かしてもらえるように、「パルスサーベイでこういう結果が出ています」と共有していきたいですね。1on1のような形でもう少し寄り添って、データや話していたことを残していくやり方で進めようと考えています。

教育については、ジョブローテーションへの活用ですね。以前までは異動は少なく、入社後に配属された部署に長く勤めるケースがほとんどでした。特に三ッ輪産業はLPガスという商材の特性上、お客様のご自宅に伺うことも多く、担当がコロコロ変わってしまうのはよくないだろうという理由です。

とはいえ、部署内での相性が良くない場合は何らかの策を講じる必要があるということで、ジョブローテーションを導入しました。2年経てば、良くても悪くても部署が変わります。2年という設定は、当社グループでは「新人が一人前になるには2年ほどかかる」という考えがあるためです。特に新卒や若手であれば、上司の良し悪しは他の人を見ないとわからないところもあります。複数の部署での経験から、どこが合っているのか“実”を取って調整していけるように、今まさにチャレンジしているところです。

多くの社員も「こんな感じの人とは相性が合うけれど、こういう人は合わないな」となんとなく自分でもわかっていると思います。それを数値化、明文化して、データで説明できるようにしたいですね。必ずしも一致するとは限らないと思いますが、ある程度は可視化された状態にしたいと考えています。

本人が「居心地がいい」と言っていても、実績が上がっていなければ最適な配置とは言えません。データを蓄積することで、客観的な事実に即した提案や改善ができるようにもなりますよね。マネジメントが複雑になってくるとは思うのですが、こういった取り組みの積み重ねが大事になると思っています。

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